「給与と労働分配率」について考える。
会社を経営する側にとって大きな投資となるのが、社員への給与。社員を雇うということは雇用を生み出すという意味でもとても価値のあることである。
しかし、給与に加え、社会保険料の会社負担分やオフィス、事務機器等が必要となり、会社の規模拡大にともなって増大するのは言うまでもない。
そうした中で、「社員の給与をどのように決めるのか」は会社にとって難しい問題であるが、その人件費を決定する方法の一つに「労働分配率」という経営指標がある。適切な人件費を決める際に役立つ「労働分配率」とはなにか、その計算方法と適正な労働分配率について考えてみた。
労働分配率とは?
労働分配率とは、企業において生産された付加価値全体の中で、役員や社員の人件費として配分された部分がどの程度あるかを表す割合であり、これによって会社に占める適正な人件費を知ることができます。
例えば、1000円で仕入れた商品を500円上乗せして1500円で販売した場合、この500円が付加価値となります。人件費には「給与」だけでなく「法定福利費」や「厚生費」も含まれます。
サービス業などの労働集約型の業種は、労働分配率が高い傾向にあり、インフラ系や製造業など、設備などの資本が集約される業種は労働分配率が低い傾向にあります。
労働分配率の計算方法
労働分配率の計算方法はこちらです。
労働分配率=人件費÷付加価値額
この計算式をもとに、算出した労働分配率と業界データの比較、また定期的に確認を行います。自社の労働分配率を定期的に確認することで、自社の人件費の総額をより適正な価格にする目標値を設定できます。人件費率が明らかに高い場合には、決算書や現場の状況に照らし合わせて改善ポイントを見つけます。
労働分配率が「高いこと」「低いこと」の意味
労働分配率が高い、つまり付加価値に占める人件費の割合が高い会社は、利益に対して人件費過多になっている可能性があります。
社員の給与水準が高いことは働く環境としては望ましいことですが、労働分配率が高くなると組織として十分な利益が確保できなくなり、必要な投資や支出ができなくなるリスクもでてきます。つまり経営を維持するのが困難な状況に陥る場合もあるのです。
また、労働分配率が低い、つまり付加価値に占める人件費の割合が低い会社は、効率よく利益を出していると言われますが、労働分配率が低すぎるのは問題です。
利益の割に社員の給与水準が低く、労働環境が好ましくない状況になっている可能性があります。収益面だけで見れば労働分配率が低い方がよいと言えますが、社員にとっては好ましくありません。生み出している利益に対して十分な報酬がもらえていないということです。
社員の意欲と労働分配率の両立
労働分配率を考える場合に、社員の「働く意欲」と「経営方針」を両立することが大切です。経営的な判断で不景気の場合には定期昇給や賞与を支払い続けるのは難しい場合も多いのですが、人件費を将来の投資と考えて、社員の働く意欲を維持するためにも、将来的に得られるであろう利益を優先する考え方が必要です。
優秀な人材の流出を防ぎ、優れた人材を育成するためにも、労働分配率だけにとらわれ過ぎることなく、バランスを考えた経営判断を行うことが大切です。